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中心部からアクセスのよい札幌市東部の住宅街にIさんのお住まいはある。3つのスクエアが重なるようにして奥へと連なり、曲線を描くRC塀が、建物の端正なフォルムに柔らかなアクセントを添えている。ご結婚を機に住まいづくりを考え始めたというご夫婦。お二人とも実家が戸建で、ご主人の両親から土地を譲ってもらえる話があったため、新築計画はごく自然な流れであった。
当初は住宅展示場などで複数のメーカーを見学したものの、納得のいく条件を提示してくれるところがなかなか見つからなかった。「打ち合わせに出てくるのはどこも営業マン。自分たちの要望を正確にプランに反映してくれなかったり、間取りに制約があるため、例えば『リビングを広くすると真ん中に柱が入る』と言われたりして。もどかしさを感じていました」
ちょうどそんな時、奥様ご友人の紹介で訪れたスター・ウェッジの住宅内覧会で建物に一目ぼれ。すぐにプランを依頼した。「設計士と直接対話できるので、要望を最大限にかつスピーディに取り込んでもらえ、設計の自由度も高い。最初に描いてもらったプランを気に入り、即決しました」
「とにかくゆったりできる開放感のあるリビングが理想だった」というご主人。たっぷりと窓を取った南向きのLDKからは一体感のあるテラスが外へと広がり、曲線デザインのRC塀が隣地や前面道路からの視線をさりげなく遮断してくれる。そのRC塀と連動するように、室内ではリビングの吹抜け天井が伸びやかに弧を描き、建物の内外を超えてダイナミックな一体感を紡ぎだしている。
一階は階段を中心にLDK、脱衣所、お風呂、トイレ、洗面所、和室がぐるりと配置された回廊式。ご実家が同じ方式だという奥様の希望で、スムーズな動線がお気に入りだ。この回廊式のおかげで、リビングでは水回りの生活音を気にせず過ごすことができ、来客時にはゲストが生活スペースを通らずに洗面所やトイレを利用できる。
中心に位置する階段には、リビングからの視線を遮るために壁を設け、塗り壁にして表情を出した。床に埋めこまれたライトに照らされると刷毛模様の陰影が浮かび上がり、見る人の目に安らぎを与えてくれる。
キッチンはつやが美しい真っ白な面材でどんな家具とも相性が良い。そこに大理石タイルのアクセントウォールや、キッチン本体を床から浮かせるデザインを施すなど、細部にまで気を使うことで、質感のよい空間に仕上がった。
2人並んで使えるよう間口をたっぷり取った洗面台は、脱衣所とは別に設けられている。家族の入浴中にも気兼ねなく使え、逆に脱衣所に干した洗濯物は人目に触れず合理的である。
「内装に関しては、実際に建築で使われる部材はすごく面積が大きいのに、サンプルはどれも小さい。それを見て家の完成をイメージしながら選ぶのって結構難しいことだと思うんです」その点、設計士はよく目の前で絵を描いて見せ、お二人の想像しにくい部分を補ってくれたそう。その感覚を信頼していたので、設計はもとより、色味や素材など内装の細かい部分も設計士にコーディネートしてもらった部分が多いそうだ。
階段を上がると9畳ほどあるゆったりとしたホールが広がり、寝室を始めとした各居室や収納に重宝している納戸などが並ぶ。2階の寝室にはご主人の希望で屋根付きのバルコニーを併設した。屋根と二方を壁に囲まれたバルコニーは、部屋の延長上のように落ち着ける空間で、ご近所の視線を気にすることなく小雨の日でもバーベキューを楽しめるんだとか。
2階ホールの突き当りにある12畳ほどのフリースペースでは、壁一面に広がるご夫婦共通の趣味であるというボルダリングウォールが出迎えてくれた。ご主人が購入した大型のスラックラインも置かれ、ちょっとしたワークアウトスペースとなっている。設計士の提案で、将来は間仕切して部屋にすることも可能だ。「家を建てる時は、どこかにボルダリングのような遊び心を取り入れたいと思っていました。新築時に比べて最近はやる機会が減ってしまいましたが、友達の子供たちには相変わらず人気ですね(笑)」 最近ご夫婦の間には双子のお子さんが生まれたばかり。小さな家族にとっても、この空間がお気に入りの遊び場になることは間違いなさそうだ。
POINT
設計のポイント
- 室内と一体となったテラスと、曲線の吹抜けが織りなす開放的なリビング。
- 階段を中心にした回廊式の間取りで、機能的な動線を確保。
- ご夫婦の遊び心があふれる広々としたボルダリングスペース。
- 1階テラスと2階の屋根付きバルコニーで、いつでもバーベキューを楽しめる。
- 直線的な建築に曲線フォルムの要素を融合させた空間デザイン。