[Special Talk Session] 横田 知朗 × 塚本 高正
豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。
STARR WEDGEでは、異業種のプロフェッショナルをお招きし、家づくりの先にある豊かな暮らしづくりについて、横田 知朗代表とお話いただきます。今回のゲストは、建築家・塚本高正さんです。横田とは20年以上前からの付き合いで、親友であり、お互いを高め合える良きライバルでもあります。この二人が語る家づくりの先にある豊かな暮らしづくりにぜひご注目ください。
豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。
STARR WEDGEでは、異業種のプロフェッショナルをお招きし、家づくりの先にある豊かな暮らしづくりについて、横田 知朗代表とお話いただきます。今回のゲストは、建築家・塚本高正さんです。横田とは20年以上前からの付き合いで、親友であり、お互いを高め合える良きライバルでもあります。この二人が語る家づくりの先にある豊かな暮らしづくりにぜひご注目ください。
刺激的な出会いを経て転機を迎えた時代の再会
横田
塚本さんに最初出会ったのは、今から二十数年前。当時私がゼネコン勤務で、塚本さんは北海道大学の大学院生で。
塚本
共和町の美術館の建築現場でしたよね。私は院生でしたが、一時休学して公共建築を手がける設計事務所で働いていたときでした。社会に出て1年目で、横田さんはすでに7年近く働いている状態で。「切れ者がきた!」というのが第一印象でした。
横田
年齢は近いんだけれどね(笑)。確かに私の方が実務キャリアはありましたが、塚本さんはとにかく吸収が早くて驚いた、というか脅威でした。たまにいるじゃないですか、後輩なんだけれど自分よりも仕事ができる人って。塚本さんはそれをさらに超えてくるタイプ。センスがあり、学んだことを展開できて、柔軟さがあり、理解力が高い。だから話が早いんですよ。教えたことの本質もすぐに理解されるから。
塚本
けれど、コスト計算的なものは当時まったくできなくて…(笑)。
横田
そうそう。設計畑からきているから、コストがリンクしていないんだよね。「え、この見積もりでできないんですか?」とか言って(笑)。
塚本
仕事として設計に携わる最初の一歩でした。学生気分が抜けきれていなかったというか(笑)。技術的な理由ではなく、コスト面で実現できないことに面食らってしまって。横田さんが丁寧に教えてくれたので、しっかりとしたコスト意識を持つようになりました。
横田
振り返ると、あの現場は濃厚だった。先日、所用でその美術館に塚本さんと行ったけど、懐かしかったよね。
塚本
とても久しぶりでしたが、あまり変わっていなくて感慨深いものがありました。私は共和町の現場が終わって3年後に退職し、その後は家具屋の澪工房に入社して、2年間ほど営業など設計以外の業務を学んでいて。
横田
そしたら私が偶然、プライベートで店舗に立ち寄って再会したんですよね(笑)。あの再会がなかったらここまで長い付き合いにはなっていなかったかもしれないです。再会した当時は建設不況で、私も転職を考えていた頃で。
塚本
そうですね。僕はちょうど澪工房での勤務を経て、独立を控えていた頃でしたから。お互い転機を迎えていたときでした。
高め合いながら走り続けるライバルであり親友
横田
塚本さんが独立し、私が札幌のビルダーに転職した当初は、一緒に仕事をすることもありましたが、仕事のパートナーというよりかは、親友という関係性でした。相談し、互いに高め合っていける親友であり、ライバルです。
塚本
私は店舗設計などの比重が多いので、少しフィールドが違いますが、同業者として互いに刺激し合えるのは本当に嬉しいと思っています。
横田
スター・ウェッジの設立も、塚本さんがいなかったら不可能でしたから。立ち上げ準備時は、毎日仕事が終わってから塚本さんの事務所に出向いて、「会社の名前、どうする?」から始まって、深夜まで打ち合わせを重ねて。
塚本
スター・ウェッジのロゴも、弊社のデザイナーにつくらせていただいて。立ち上げ準備に奔走した日々は忙しかったけれど充実していました。お互い若くて体力もあって(笑)。あれから会社同士の交流もあり、私も横田さんから得るものが多々ありました。人材の育成に関しては、多くのスタッフを抱えるスター・ウェッジの姿勢に、経営者として学ぶことが多く、よく相談させていただいています。先日はお好み焼きをつくりにお邪魔しましたよね(笑)。
横田
そうでした(笑)。少しでもスタッフの息抜きにつながればと思い、暖簾も用意して、関西出身の塚本さんが本場のお好み焼きを、私がシャバシャバのたこ焼きをつくるという(笑)。でも、スタッフとの時間の過ごし方は、塚本さんに倣ったものでもあるんですよ。
塚本
弊社も立ち上げ当初はキッチンがあってよく飲んだり、食べたりしたものです。この春に改装し、キッチンの代わりに今はスタッフ用のジムをつくりました。業種的に不健康になりがちだから、好評ですよ。
横田
ジムはすごいよね!でも改めて振り返ってみても、身近に塚本さんがいたから私は頑張って来れたと思っています。ライバルがいなければ、踏ん張れなかったこともありましたから。
塚本
お互い世襲ではなく、一代で会社を立ち上げてきたので、他の設計事務所や工務店とは違うやり方をしている部分もあると思います。だからこそ共感し合えるし、横田さんの仕事を目の当たりにして、「自分のやり方も間違っていない」と確認することもできるので、非常に心強いです。
住宅設計と店舗設計それぞれのサステナブルデザイン
横田
情報交換ができるのはありがたいです。
塚本
こうやってモデルハウスも直接見ることができて良い情報を得ることができました。環境に配慮した建材や、「サステナブルデザイン」というコンセプトなど、店舗設計を主軸としている私から見ると、とても新鮮なものでした。私も住宅設計時に取り入れたいものが多数あり、モデルハウスはとても刺激的な空間でしたよ。
横田
弊社のモデルハウスは環境に配慮した材料を厳選したり、世代を超えて長く住みやすいことを大切にした普遍的価値のあるプランニングを実現しました。暖房・給湯にヒートポンプ機器を、キッチンにIHクッキングヒーターを使用する「スマート電化」を採用するなど、省エネルギーな電化の暮らしも提案しているんです。
塚本
店舗設計はオペレーションのスムーズさだったり、スタッフの使いやすさ、お客様の心地よさなどが優先されたり、常に新しさを求めるため短いスパンでのリニューアルを想定するなど、住宅設計とはニーズが異なる面もあって。「サステナブルデザイン」をいかに店舗に取り入れるのか、というのは改めて考えました。
横田
店舗設計に取り入れる難しさって確かにありますよね。あえて表現するとすれば、職人の技を見せるオープンなキッチンをつくるとか、そういうことじゃないのかな。職人の技術という後世に残すべき無形の財産を見せることでつないでいくという。
塚本
確かに!そういう解釈でいくと、サステナブルデザインは広がりますよね。なるほど、刺激になります。
横田
変化に飛んだ社会だけれど、これからもお互いに情報交換をしながら、良きライバル、友人として進んでいきましょう。
塚本 高正(つかもと たかまさ)さん
一級建築士事務所ティーサイズ 代表
大阪市生まれ。北海道大学工学部建築工学科卒業。都市設計研究所と澪工房の勤務を経て、2004年に一級建築士事務所ティーサイズを設立。同社は、住まう人との会話の中にデザインのヒントが隠れているという考えのもと、「コミュニケーションを大切に」を基本スタンスに、店舗も住宅も、押し付けのデザインではなく、建て主と一緒になって考えつくっていくことを心がけている