[Special Talk Session] 横田 知朗 × 田島 理恵
豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。
STARR WEDGEでは、異業種のプロフェッショナルをお招きし、家づくりの先にある豊かな暮らしづくりについて、横田 知朗代表とお話いただきます。今回のゲストは、ヴァイオリニストであり、音楽教室を運営されている田島 理恵さんです。自宅兼音楽教室をスター・ウェッジで建てたのが、お二人の縁の始まりでした。
豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。
STARR WEDGEでは、異業種のプロフェッショナルをお招きし、家づくりの先にある豊かな暮らしづくりについて、横田 知朗代表とお話いただきます。今回のゲストは、ヴァイオリニストであり、音楽教室を運営されている田島 理恵さんです。自宅兼音楽教室をスター・ウェッジで建てたのが、お二人の縁の始まりでした。
家づくりが縁となって実現したコラボレーション
横田
田島さんとは、ご自宅兼音楽教室を新築して以来のお付き合いです。イメージは『エネルギッシュな人』。音楽に対する情熱と、暮らしを大切にしたいという思いに、私も刺激を受けました。
田島
私が横田社長に抱いた第一印象は『アーティストのような雰囲気がある人』。新築の依頼先を検討する中で、さまざまな会社の方と話をしましたが、ほとんどが『家を商品として売りたい』と考えるビジネス的な考えばかりで、横田社長の『暮らしをイメージする』という家づくりの姿勢はとても新鮮でした。
横田
暮らしをイメージするってとてもおせっかいな話ですよね(笑)。けれど、そのおせっかいこそが建築家の真骨頂だと私は考えています。田島さんの住まいの場合は、音楽教室とプライベートをバランスよく両立させることがテーマ。音楽と暮らし、同じ敷地内に住むご両親との関係など、取り巻く要素を整理してデザインしました。私の妻がピアノ講師だったため、音楽教室でのレッスン風景も戸惑いなく思い描くことができましたね。
田島
外観の曲線も特徴的で心惹かれました。「外観を見て気になっていたんです」というお問い合わせをいただくこともあるんですよ。
横田
地域に愛されるアイキャッチ的なデザインを意識していたので、とても嬉しいですね!
田島
私が希望を伝えるたびにイメージを膨らませて配慮の行き届いた提案をしてくれるので、横田社長との打ち合わせはとても楽しくて。家づくり後もチャリティーコンサートを通してこのご縁が続いているのが非常に嬉しいです。
横田
チャリティーコンサートの企画時に一番最初に思い浮かんだのが田島さんでした。子どもが同伴できるクラシックコンサートってとても少ないけれど、音楽は幼い頃こそ聴かせるべきものだと私は思っていて。田島さんと子ども向けのプログラムをやりたいと考えたんです。
田島
1回目は私の出産と重なってしまい叶いませんでしたが、2回目以降はご一緒できて、とても嬉しいです。今後は絵本を制作し、その絵本に曲をつけて演奏するというすべてオリジナルのコンテンツにも挑戦したいと思っていて、絵本作家さんや作曲家の方に依頼中です。
横田
それは素晴らしいですね!おかげさまで弊社のチャリティーコンサートはチケットの入手が難しいほどの人気イベントに成長することができました。
音楽家も建築家も喜ぶ相手がいて成り立つもの
田島
住まい手の思いを大切にしてくれたように、チャリティーコンサートのときも、演奏者の立場になって企画してくれて、やはり横田社長にはアーティストに近いものを感じます。
横田
強いていうならば、流行作家だと思っています。決して大作はつくらないけれど、その時代の一歩先を歩く人でありたいな、と。音楽業界で例えるならば秋元康さん的な(笑)。
田島
確かに家づくりは音楽に例えると作曲だと私も思っていて、建築家はコンポーザーですよね。私たち演奏者は住まいにとっての装飾に近いのかな。建築家には住まい手がいて、音楽家には聴き手がいるというのも共通するところですよね。
横田
『喜んでくれる相手がいる』ということが、表現者として最も重要なことですよね。
田島
本当ですね。最近までのコロナ禍で、私たち演奏家は多くの発表の場を失い、音楽教室の生徒さんも発表会が延期になったりしました。もちろん落ち込みもありましたが、必ずしもマイナスなことばかりではありませんでした。
横田
気づきや得るものもあった、と。
田島
そうです。私個人だと、遠方に暮らす巨匠にリモートでレッスンを受けることができたというプラスな面がありました。生徒さんに関しても、音楽レッスンというのは、本番で披露するレベルに持っていくためのプロセスが非常に重要なのですが、コロナ禍による発表会の延期で生徒さんは1年に2度もそのプロセスを踏みました。悔しさもありましたが、技術的にも精神的にも得るものが非常に大きかったと感じています。ご自宅で演奏したものを撮影して、動画を送ってくれた生徒さんもいらしたんですよ。
時代の変換期に考える本当の豊かさとは
横田
リモートレッスンの話もありましたが、ITインフラの普及が加速したことはコロナ禍による大きな変化の一つではないでしょうか。PCの売り上げも伸びたと聞きますし、印鑑をなくそうという動きも出てくるなど、時代の変換期だと感じています。住宅業界では建築の技法そのものに変化はないけれど、リモートワークの部屋を充実させるなど細かな動きはありました。今後は夫婦でリモートワークをしながら協力して育児をする家庭も増えてくるかもしれませんね。家の中で過ごす時間が増えた分、田島さんの音楽教室のように、地域の子どもや大人が集まる場所はより一層大切になってくると思います。
田島
大人の生徒さんは忙しい毎日の中でわざわざ時間をつくってレッスンを受けています。お子さんの場合は、親御さんも一緒に難しい壁に立ち向かいながら1曲1曲を乗り越えていきます。『音楽ができたからって何になる?』という声を耳にすることもありますが、こんな時代の中で音楽を続けること、音楽を通して子どもの成長を見ること、自分の人生の中に音楽とともに過ごした時間があり、1曲1曲にエピソードを持てることが、私はかけがえのない豊かさだということを改めて実感しています。
横田
田島さんの娘さんもヴァイオリンを始めたんですよね?
田島
そうなんです。ステイホーム中に時間があったので、レッスンを始めました。そういえば先日、一緒にお風呂に入っていたら、娘が浴室の床を磨き始めたんです。
横田
へぇ! いきなりですか?
田島
どうしたの?って尋ねたら『おうちはきれいにしていたら、ずっとピカピカのままでいられるんだよね!』って。
横田
娘さんが家をとても大切に思ってくれているということが伝わって、とても嬉しいお話です。やっぱり建築デザインは住まい手があって初めて生きてくるものなんだなと、改めて実感しますね。
田島 理恵(たじま りえ)さん
ARCO音楽教室 代表・ヴァイオリニスト
札幌市生まれ。北星学園女子高等学校音楽科、東京音楽大学器楽科(ヴァイオリン専攻)卒業。NPO法人「アンサンブルグループ」奏楽メンバー。北星学園女子高等学校ヴァイオリン特別授業講師。北海道を中心にクラシックのみならずテレビやライブなどでさまざまなジャンルのアーティストのサポートなどの演奏活動を行う傍ら、自身の音楽教室を通して後進の指導にあたっている。ARCO(アルコ)という名前には、七色の音楽を奏でる幸せな時間と人々をつなぐ架け橋となり、ともに歩いて行きたいという思いが込められている